摘要:3大学(明治・芝浦工業・日本)の進路と5年後の収入
このレポートは、日本の大学新卒者がどのような業界・企業に就職し、3年後・5年後にどの程度の収入になりそうかを、公開データだけを使って整理したものです。明治大学(10学部)、芝浦工業大学、日本大学の3大学を取り上げ、男女別のデータ、業種・職種ごとの待遇と昇進、理系学生向けの進路ガイドも加えています。数字はすべて出典番号(角括弧つきのSで始まる番号)つきで、モデルによる推算値は「推計」と明記し、必ず幅(範囲)で示します。
全国の状況
大学(学部)卒業者の就職率(各年4月1日現在、就職希望者に占める就職者の割合)は、2022年3月卒の95.8%[S0007]から、2023年3月卒の97.3%[S0008]、2024年3月卒の98.1%[S0009]へ上昇し、2025年3月卒は98.0%[S0010]、2026年3月卒も98.0%[S0011]でした。全国平均で98%前後という高い水準のため、就職率だけでは大学・学部の違いは見えにくくなっています。このレポートでは、どの業界・規模の会社に入るか、そして入社後の収入と定着に注目します。
明治大学の概況(2026年3月卒業)
2026年3月卒業(2025年度、年度の読み方)の卒業者は7,712人、うち就職者は6,132人、大学院進学者は964人でした[S1001]。就職者の業種は、情報通信業24.2%、金融業・保険業14.5%、製造業12.7%、学術研究・専門・技術サービス業12.0%、卸売業・小売業7.8%の順です[S1001]。
入社後の年収(推計年収の定義)は、賃金構造基本統計調査(大学卒)と業種構成から計算した推計で、入社1年目が368〜412万円、3年目が402〜463万円、5年目が436〜514万円です(推計、幅は企業規模100〜999人〜1,000人以上の差)[S0001][S1001]。これは「明治大学卒の平均」ではなく、「同じ業種構成の大学卒の賃金水準」を当てはめた目安です。
保護者の方へ:3つのポイント
- 就職率より「業種の広がり」を見てください。 全国の就職率は98.0%[S0011]で、明治大学は就職者の約4人に1人が情報通信業(24.2%)、続いて金融・保険(14.5%)、製造(12.7%)に進んでいます[S1001]。学部ごとに偏りがあるため、志望学部の業種構成を確認することが大切です。
- 5年後の収入は「幅」で考えてください。 推計の5年目収入は全学で436〜514万円[S0001][S1001]、学部別では426〜531万円の範囲です(推計)[S0001][S1202][S1402][S1605]。このモデルでは、学部間の差は業種構成の違いだけから生じます。また、大学卒の3年以内離職率は全国で33.8%(令和4年3月卒)で[S0006]、事業所規模1,000人以上は27.0%、5〜29人は52.0%と事業所の規模で大きく異なります[S0005]。
- 文系は専攻と仕事の対応が弱い傾向があります。 全国調査では、文系専攻のいずれでも7〜8割が「文系職種」に就いています[S0700]。明治大学文学部の対応度(定義)は、業種ベースの推計で「低」でした(推計)[S1202][S0712][S0714][S0724]。「専攻が仕事に直結しない」ことを前提に、学部選びでは学び自体の関心と進路の幅の両方を見てください。
芝浦工業大学の概況(2026年3月卒業)
卒業者は1,920人で、大学院進学者が960人(50.0%)、就職者が918人でした[S2000]。半数が大学院に進むため、学部卒の就職だけでは進路の全体像になりません。公表されている指標は就職内定率(就職者÷(就職者+未決定者))で、大学全体は99.8%です[S2000]。就職者を「就職者+未決定者」で割る点では「就職率(希望者ベース)」に近い考え方ですが、調査時点が示されておらず、分母から外す「その他」(留学・進学準備・未報告など)の範囲も大学ごとの決め方です[S2000]。そのため別の指標として扱い、明治大学・日本大学の値とは並べて比べません。
業種別の公表がないため、大学院生を含む上位就職先30社の人数と各社の業種から業種構成を推計しています。電気・情報通信機械器具製造が32.6%、輸送用機械器具製造が17.7%、建設業が15.8%、情報通信業が10.9%です(推計)[S2000]。上位就職先は日本電気35人、本田技研工業27人、東京都庁24人です[S2000]。収入は大学院生を含む上位30社の人数にもとづく「就職先からの推計」で、1年目が358〜415万円、3年目が387〜464万円、5年目が415〜514万円です(推計)[S0001][S0002][S2000]。学科ごとの収入・業種は、データ不足です[S2500]。
日本大学の概況(2026年3月卒業)
学部卒業者は14,799人です[S5002]。業種別の就職状況(学部卒業者と大学院修了者の合計)は、情報通信業15.9%、宿泊・飲食・生活関連・その他サービス業12.9%、卸売業・小売業10.7%、建設業10.6%、公務8.2%の順で、特定の業種に偏らない幅広い分布です[S5002]。推計年収は1年目が362〜406万円、3年目が395〜454万円、5年目が427〜501万円です(推計、大学公表の業種構成による)[S0001][S0002][S5002]。
学部によって公表の仕方が異なります。法学部は「就職希望者に対する就職率」が95.92%(卒業者1,562人、就職者1,298人)です[S5010]。医学部は卒業者119人のうち臨床研修医が100人(卒業者ベース84.0%)で、医師国家試験の合格率(新卒)は84.0%です[S6658][S6651]。歯学部・薬学部・獣医学科も国家試験合格率が重要で、歯学部57.8%[S6652]、薬学部76.97%[S6650]、獣医学科76.4%[S6326]です。これらの学部の推計年収は業種ではなく職種別の賃金統計によるもので、例えば医学部は1年目(25歳)が509〜698万円、3・5年目(27・29歳)が698〜872万円です(推計)[S6661]。
男女別にみると
男女別の数字は、男女別に公表された値だけを使っています(男女別データの範囲)。
- 2026年3月卒業の学部卒業者は、明治大学(10学部の合計)が女性2,733人・男性4,979人、芝浦工業大学(4学部の合計)が女性380人・男性1,540人です[S9001][S9002][S9003][S9004][S9005][S9006][S9007][S9008][S9009][S9010][S9141][S9142][S9143][S9144]。大学によって女性の人数の割合が大きく違うため、学部の男女別の値は割合ではなく人数とあわせて読んでください。
- 大学卒・企業規模1,000人以上の所定内給与額(月額、2025年6月分)は、20〜24歳で男性276.8千円・女性273.0千円、30〜34歳で男性391.2千円・女性334.5千円と、年齢が上がるほど差が開きます[S9420]。
- 課長相当職以上(役員を含む)の管理職に占める女性の割合は産業計で13.8%、業種別では医療・福祉の53.6%から電気・ガス・熱供給・水道の5.6%まで差があります(2025年10月1日現在)[S9422]。35〜39歳の大学卒で係長級以上の役職に就いている人は、男性25.2%、女性12.4%です[S9423]。
これらの賃金差・役職差は、職種・役職・勤続年数などの違いを含む平均どうしの差で、同じ仕事をしたときの男女差ではありません[S9420][S9423](男女の賃金の差異)。詳しくは男女別のデータをご覧ください。
待遇と昇進
- 3年以内離職率(2022年3月卒)は、本レポートの業種区分の中では電気・ガス・熱供給・水道が12.4%で最も低く、教育・学習支援が44.2%で最も高い値です。離職率の表で別に掲げていない宿泊業・飲食サービス業(55.4%)と生活関連サービス業・娯楽業(54.7%)は、それより高い値です[S0004]。
- 35〜39歳の大学卒で係長級以上の役職に就いている人の割合は、卸売・小売27.9%、建設27.1%、学術研究・専門・技術サービス26.5%が高く、産業計は21.2%です[S0100][S0101][S0104][S0105]。これは業種ごとのある時点の割合で、一人ひとりが昇進する確率ではありません(役職者比率(昇進指標))。
- 企業のモデル年収の例では、伊藤忠テクノソリューションズが大卒・標準評価で2年目683万円、5年目775万円、7年目906万円の年収イメージを公表しています[S0343]。企業が示す例であり、実際の平均ではありません(企業のモデル年収)。有報の平均年間給与は大手中心の少数の企業の値で全従業員の平均のため、業種の順位は付けていません(有報の平均年間給与)。
詳しくは待遇と昇進をご覧ください。
理系学生の進路ガイド
理系の進路を、情報系、機械・電気電子、建築・土木、薬学・化学・生命の4つの道に整理しました。男子にも女子にも同じ道を示し、男女別のデータは参考として添えています。
- 情報系(明治・情報科学科)は、就職者60人中35人(58.3%)が情報通信業に進み、大学院進学率は46.3%です。推計年収は3年目が398〜476万円、5年目が431〜530万円です(推計)[S1402][S0001]。
- 建築・土木(明治・建築学科)は、就職者69人中35人(50.7%)が建設業に進み、大学院進学率は51.9%です。推計年収は3年目が422〜493万円、5年目が460〜545万円(推計)で、建設業の3年以内離職率は30.5%、女性管理職比率は9.1%です[S1402][S0001][S0004][S9422]。一級建築士試験(設計製図)の2025年の出身校別の最終合格者は、日本大学156人、芝浦工業大学103人、明治大学69人です。既卒者を含む総数で、学校別の合格率は公表されていません[S0730]。
- 薬学(日本大学・薬学部)は、就職者183人中167人が薬剤師で、大学院進学率は3.3%です[S6654]。推計年収は薬剤師の職種別賃金によるもので、3年目・5年目とも501〜564万円です(推計)[S6661]。主な就職先の薬局・ドラッグストアが公表する薬剤師の初任給は月280,000〜421,250円で、転居を伴う異動の有無などコースによって違います[S2122][S2115]。
機械・電気電子、化学・生命を含む比較表は理系学生の進路ガイドをご覧ください。
3大学を並べて読むときの注意
- 就職率は3つの異なる定義があり、混ぜて比べられません。明治は希望者ベース[S1000]、芝浦は就職内定率[S2500]、日本大学は全学式の卒業者ベースと学部公表の希望者ベースが混在します[S5000][S5010]。詳しくは「方法とデータ説明」をご覧ください。
- 推計年収は、明治大学と日本大学が大学公表の業種構成、芝浦工業大学(大学全体のみ)が就職先からの推計、日本大学の医・歯・薬・獣医が職種別賃金と、算出の土台が異なります。同じ「推計」でも意味が違うため、幅の比較は目安にとどめてください。
- 企業名だけで人数のない就職先は、人数の計算には使っていません(芝浦工業大学の学科別、日本大学の一部学部)[S2500][S5019]。
男女別・待遇・ガイドの数字は、いずれも全国統計や企業の公表値にもとづく傾向で、特定の進路で昇進や高い年収が得られることを示すものではありません。データの扱いと限界は「方法とデータ説明」をご覧ください。